プロのギタリストで足元にペダルボードもないのに曲中でパッチが切り替わるのって憧れませんか?
足元は広々しているし、踏み間違えることもないですし、配線関係のトラブルも減るかもしれません。
僕はAmplitubeやBias FX 2といったソフトウェアアンプシミュレーターを使っているので、いつかDAWと組み合わせることで曲中でパッチを自動的に切り替えることに挑戦してみたいと思っていました。
ちょっと苦労しましたが皆さんにもやってみてほしいですし、少し苦労した分、自分自身のための備忘録的にも記事にしてみました。
パッチに自動切り替えとは
マルチエフェクターはペダルを踏むことで音色(パッチのほうがしっくり来るので以降パッチとします)が切り替わり、一瞬で複数のエフェクトの状態を同時に変化させることができるのは皆さん言われなくてもわかっていると思います。
AmplitubeもPCの外部にMIDIのフットスイッチを接続することでパッチの切り替えは可能です。
これはMIDIフットスイッチがMIDI信号をソフトに送り、それを受け取ったAmplitube側でパッチを切り替えるという動きで実現しています。
DAWはこのMIDI信号を曲の進行に合わせて送り出すことができるので、これをAmplitubeに送ることでパッチが曲の途中で切り替えられます。
逆に言うと、DAWを使わないと自動切り替えは出来ません。ですので、打ち込みを使わないバンドで自動切り替えは出来ないということになります。
ギタリストが一人で宅録をやる場合や、すべての曲でDAWを使った打ち込みをしているバンドのギタリストはこれを知っているとかなり楽だと思います。
必要なもの
今回はAmplitubeのパッチをDAWを使って自動的に切り替えるということのフォーカスしますので、AmplitubeとDAWだけあれば出来ます。
僕は以前からDAWは無料だけど機能制限ナシのCakewalk by Bandlabを使っていますので、これを使います。
Cakewalkは知名度としては高くありませんが、過去有料ソフトとして売られていたものが現在無料ですので、他の有料ソフトのお試し版のような機能制限でストレスがたまるということはありません。
過去のCakewalkの紹介記事を載せておきます。
Cakewalkを使っておらず、別のDAWを使っているという人でも、よほどマイナーで、ある目的に特化したようなDAWではない限り同様の機能はあるはずです。ただし、無料版だとパッチの切り替えができないという可能性はあります。
そのあたりはすみませんが、自身で調べてみてください。
DAW側の準備
DAW側では最低2つのトラックを用意する必要があります。
ここでは便宜的にトラックAとトラックBという呼び方にします。
トラックB:Amplitubeのパッチを切り替えるMIDI情報を入力するインストゥルメントトラック
トラックAとしてオーディオトラックの方はギターの音をレコーディングするので、プラグインのAmplitubeを挿入しておくことも必要になります。
オーディオトラックの作成からAmplitubeを挿入するところまでの動画です。
さらにもう一つ、トラックBとしてインストゥルメントトラックを作成します。
このときインストゥルメントとして音源(デフォルトではTTS-1)の指定必要はなく、「MIDIのみ」として空のインストゥルメントトラックを作成します。
このトラックが後にMIDIのパッチ切替情報を書き込んでいくトラックとなります。
Amplitube側の設定
トラックAに挿入されているAmplitubeを設定していきます。
MIDI入力をONにする
まず最初に行わなければいけないのは、プラグインであるAmplitubeがDAWからのMIDI信号を受け付けるようにする設定が必要になります。この設定を最初にしておかないと絶対に切り替わらないので、最初に設定しておきましょう。
Amplitubeの画面の上の方に小さく「VST2▼」と表示されているところがあるので、ここをクリックすると「MIDI入力 オン」という項目があるので、ここをクリックしてMIDI入力を受け付けるように設定します。
パッチの登録
今回は例として4つのパッチを切り替えて見ようと思います。
Amplitube上で音色を作って、パッチとして登録する作業については割愛しますが、
①Intro ②Riff A ③Riff B ④Solo
という④つのパッチがすでに出来上がっているものとします。
DAWからのパッチの呼び出し方法は、Amplitubeに対してパッチの番号を送ることでパッチを切り替え(呼び出し)ます。
そのため、切り替えたいパッチに番号を指定してやる必要があります。
今回の例ではもともと登録されているパッチがあるので、それと重ならないように、以下のように割り当てました。見た目でわかりやすいようにアンプで見分けられるようにしてみています。
31:Intro (Fender?)
32:Riff A (Marshall JMP50 Red?)
33:Riff B (Marshall JCM800?)
34:Solo (Mesa Boogie MK3?)
パッチの登録は右上のメニューアイコンから行います。こちらも動画のほうがわかりやすいと思うので、Introを31番に登録するところを動画にしました。
動画では1つしか登録していませんが、同じ方法で4つのパッチをすべて登録してください。
これでAmplitube側の設定は完了です。
Cakewalk側の設定
MIDI信号の出力先の設定
Amplitube側でMIDI入力をONにするとCakewalk側のMIDIトラック(トラックB)でMIDI信号の出力先でAmplitubeが指定できるようになります。
MIDIトラックが指定されている状態で、アウトプット先をクリックするとAmplitube5が選択できるようになっているはずなので、Amplitube5を選択します。
もしこのときAmplitube5が選択肢に現れていないようであれば、Amplitube側の設定で、MIDI入力がONになっていないことが原因ですので、MIDI入力をONに設定してください。
MIDIトラックへの打ち込み
次はDAW側で、どのタイミングでAmplitube側にどのパッチを呼び出すのかを打ち込んでいきます。
MIDI情報はトラックBへ入力しますが、入力の方法は「イベントリスト」というものを使います。
イベントリストの表示方法はトラックBが選択されている状態で「表示」→「イベントリスト」または、Alt+8で表示させます。
ここにイベントを追加していくわけですが、イベントのタイミング、つまりパッチの切り替えをどのタイミングで行うかはイベントリストの上のトラック表示部のタイムルーラーでカーソルを置いて指定してやるのが一番楽だと思います。
①のカーソルでイベント挿入位置を指定、②プラスマークをクリック ③でイベントらしきものが出来上がっていると思います。
ここでイベントリストに何も表示されていないと思います。Cakewalkのバグと言うほどではない不具合だと思いますが、④のところに何故か隠れて生成されるという謎仕様があるため、マウスのホイールを回転させて一番上の行を表示させてやる必要があります。スクロールすると下のような行が出来上がっていると思います。
これがデフォルトで出来上がったイベントですが、「Note」という種類のイベントで、内容はCの音を4分音符の長さだけ強さ100で鳴らしなさいという、パッチの切り替えには全く関係ないイベントが出来上がっているので、これを編集していきます。
Noteというところをダブルクリックしてイベントの種類を「パッチチェンジ」に変更し、次にパッチの番号を指定してあげます。一連の流れを動画にしています。
この例では2小節めの先頭にパッチ番号30番をMIDIチャネル1番に送るという設定を指定しています。
ここで注意点として2点ほど。
まず、MIDIチャネルについて、Amplitubeはどうやら受信するMIDIチャネルは1以外変更できないようなので、Cakewalk側ではチャネル1以外に設定するとAmplitube側でパッチは切り替わらないので、MIDIチャネルは必ず1を指定してください。
もう一点はパッチの番号に振り方ですが、Amplitube側ではパッチ番号を31から34に割り当てましたがCakewalk側では30番を送信しています。
これはAmplitubeのパッチの数え方が1~128までなのに対して、Cakewalkは0~127ということで1つずつずれているからです。
ですので、Amplitubeの31番を呼び出したいときはCakewalkからは30番を送信するという面倒なことになっています。
MIDIの規格としては0~127という数え方のほうが正しいので、ここはAmplitubeに修正して欲しいところですね。
2小節目にIntroを入力しましたので、現実的にはありえないと思いますが、4小節目にRiff A、6小節目にRiff B、8小節目にSoloのパッチを入力してみます。
入力が終わったら再生ボタンを押して実際にパッチが切り替わるか確認してみましょう。
最初の2小節目からきちんとFenderに切り替わるかわかるように、一番最初は全く関係のないSoldanoを表示させてからスタートさせています。
うまくいきましたか?
パッチが自動的に切り替わるのはメチャクチャ格好いいですよね~
トラブルシュート
うまくいかない場合、以下のところを確認してみてください。
まとめ
憧れのパッチの自動切り替えができるようになりました。
MIDIについて全く解説していないので、いまいちよくわからないままという人もいるかも知れませんが、とりあえずこの通りにやればなんとかなるのではないでしょうか。
今回はパッチの切り替えをMIDIでやってみましたが、大規模なライブとかになるとMIDIで同期させて照明などもコントロールしています。すごいですよね。
で、大事なことをいい忘れていましたが、これで実際に演奏してみてください。
ハードウェアのマルチエフェクターと違って残念なことにタイムラグが生じます。ソフトウェアならではの弱点と言えると思います。
それを見込んで、若干パッチの切り替わりのタイミングを前倒しておくという微調整が必要となります。
しかし、どのくらいのタイムラグなのかは、環境によって全く違うと思います。読み込んでいるプラグインの数やエフェクトの複雑さなど、数多くの要素が絡んでくるので、曲を作り込んでいくことでそのタイミングも変わってしまうかもしれません。
ですので、より実践的な使い方としては、AmplitubeのトラックとMIDIトラックをもう1ペア作っておいて交互に音を出すようにするという方法が良いかもしれません。
つまり、IntroはAmplitube①を使い、Intro演奏中にAmplitube②の方はボリューム0でRiff Aをスタンバイさせておき、IntroとRiff Aの切り替えはAmplitube①のボリュームを0にしてAmplitube②のボリュームを上げる。
その後Riff A演奏中の適当なタイミングでAmplitube①はボリューム0の状態でIntroからRiff Bにパッチを切り替えておき、Riff Bのスタンバイをさせておく。という使い方です。
もっとシンプルな方法があるかもしれませんが、いろいろ探してみようと思います。
みなさんもいろいろ挑戦してみてください。
ではでは
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